てんかんは、脳の神経細胞の一過性の異常な興奮によって発作が起きる病気で、その種類によって発作の特徴や対応方法が異なります。以下に、代表的なてんかんの種類別に、発作の特徴と適切な対応方法を わかりやすく、かつ詳しく 解説します。
【1】強直間代発作(全般発作の一種)
■ 特徴:
・古典的な「てんかん発作」のイメージに近い。
・突然意識を失い、全身が硬直(強直期)した後、ガクガクとけいれん(間代期)を起こす。
・発作中に転倒、舌をかむ、尿失禁を伴うこともある。
・発作は1〜3分程度で自然におさまる。
■ 対応方法:
1.安全確保:
・転倒して頭などを打たないよう、近くの危険物(家具・ガラス製品など)をどける。
・頭の下にタオルや服などを敷くとよい。
2.身体を押さえない:
・けいれんを無理に止めようとしない。
3.口に物を入れない:
・舌をかんでも、口に物を入れてはいけない。窒息の原因になります。
4.時間を計る:
・発作の持続時間を記録。5分以上続く場合は「てんかん重積状態」の疑いがあるため、救急車を呼ぶ。
5.発作後のケア:
・発作が止まった後は、横向きに寝かせて(回復体位)、呼吸を楽にする。
・意識が戻っても混乱している場合があるので、落ち着くまでそばにいる。
【2】欠神発作(小発作)
■ 特徴:
・数秒から数十秒間、突然ぼーっとして反応がなくなる(意識障害)。
・周囲の呼びかけに反応しない。
・目をぱちぱちさせる、動作が止まるなどの特徴あり。
・けいれんや転倒は基本的にない。
・子どもに多く、1日に何度も起きることがある。
■ 対応方法:
1.安全確保:
・動いている最中(自転車や階段など)で発作が起きた場合は、転倒防止のため安全を確保する。
2.見守る:
・発作は数秒で自然におさまることが多いので、無理に揺すったりせず静かに見守る。
3.発作記録:
・いつ・どれくらいの時間・どんな様子だったかを記録し、主治医に伝える。
・学校の先生など周囲にも特性を理解してもらうことが重要。
【3】ミオクロニー発作
■ 特徴:
・筋肉が瞬間的にビクッと動く発作(1秒未満)。
・両腕が跳ね上がったり、手に持っているものを落としたりする。
・意識はあることが多いが、連続することもある。
・朝方に起こることが多く、思春期に多い「若年ミオクロニーてんかん」でよく見られる。
■ 対応方法:
1.転倒防止と周囲の整理:
・繰り返す場合には周囲に割れ物や熱いものを置かないなど環境整備をする。
2.ケガ予防:
・手に物を持っているときに発作が起きやすいため、発作の多い時間帯(朝など)には注意。
3.医師への報告:
・発作頻度や状況を詳細に記録し、受診時に報告する。
【4】焦点発作(部分発作)
※発作が脳の一部から始まる。以下に意識の有無で分類。
【4-1】意識保持を伴う焦点発作(旧称:単純部分発作)
■ 特徴:
・意識ははっきりしている。
・手足のけいれん、しびれ、感覚の異常、視覚や嗅覚の異常など、局所的な症状。
・数秒〜数分で自然におさまる。
■ 対応方法:
1.安心させる:
・本人は自覚があることが多いので、落ち着くよう声かけする。
2.安全確保:
・発作によって転倒や交通事故のリスクがある場面では保護する。
【4-2】意識障害を伴う焦点発作(旧称:複雑部分発作)
■ 特徴:
・意識がぼんやりし、意味のない動作(口をもぐもぐさせる、服をいじる、歩き回るなど)を繰り返す。
・数分でおさまることが多いが、本人には記憶がない。
■ 対応方法:
1.そっと見守る:
・突然走り出すなどの行動もあるため、転倒・事故防止のため周囲で見守る。
2.動きを制限しすぎない:
・無理に動きを止めると本人や他人がケガをする可能性がある。
3.発作終了後の対応:
・意識が戻って混乱している場合があるので、安心させる。
・記録して医師に伝える。
【5】てんかん重積状態(緊急事態)
■ 特徴:
・発作が5分以上続く、または短時間に連続して起こり意識が回復しない状態。
・命に関わるため、緊急対応が必要。
■ 対応方法:
1.すぐに救急車を呼ぶ(119)
2.発作時と同様に安全確保しながら経過観察:
・呼吸確認、気道確保、回復体位を取らせる(できれば)。
3.医師の指示で頓用薬があれば使用(ダイアップ坐薬など)。
【補足】発作記録のポイント
・発作の前兆(本人の訴えや様子の変化)
・発作の開始時間・持続時間
・意識の有無
・体の動きや症状
・発作中・後の反応
・使用した薬や救急対応の有無