小児と成人のてんかん(てんかん性発作)は、共通点もありますが、原因・発作のタイプ・経過・治療方針などにさまざまな違いがあります。以下に、わかりやすく、かつ詳しく解説します。
🔍 小児てんかんと成人てんかんの主な違い
観点 | 小児てんかん | 成人てんかん |
---|---|---|
主な発症年齢 | 新生児〜思春期(0〜18歳) | 20代以降(特に高齢者で増加) |
主な原因 | 遺伝・脳の発達異常・周産期の脳損傷など | 脳血管障害(脳梗塞・出血)・腫瘍・外傷・アルツハイマーなど |
発作のタイプ | 非典型的・多様(欠神発作・点頭てんかんなど) | 部分発作(焦点発作)が多い |
治癒の可能性 | 成長とともに治るケースが多い | 慢性的で再発しやすい傾向がある |
薬への反応 | 比較的良好なことが多い | 難治性になることがある |
治療方針 | 発達への影響も考慮した治療(薬の選択が重要) | 合併症や生活習慣病も考慮して治療 |
社会的影響 | 学校生活・発達・行動などに影響 | 就労・運転・高齢者では認知症との関連も |
🧠 発症メカニズムの違い
■ 小児
・脳が発達途中のため、興奮と抑制のバランスが崩れやすい
・脳の形成異常や遺伝子変異が関与することも多い
・生理的にてんかんを起こしやすい時期がある
■ 成人
・完成された脳に対して、「何らかのダメージ」が原因となる
・加齢による変性や血管障害、脳腫瘍などの後天的な病因が主
・てんかん発症の背景に基礎疾患があるケースが多い
🔄 経過の違い
■ 小児
・成長とともに自然軽快することも(例:良性小児てんかん)
・発達障害や学習障害を合併することがある
・薬の調整で発作をコントロールしやすい
■ 成人
・慢性化・再発性になりやすい
・脳血管疾患の後遺症として出現することも
・高齢者では、てんかんが認知症の一症状として現れることもある
💊 治療の違い
・小児では、発達への影響が少ない薬の選択が重要
→ 例:バルプロ酸、ラモトリギン(ただし副作用に注意)
・成人では、基礎疾患や内服薬の相互作用に注意
→ 高齢者では代謝・腎機能も加味して慎重な薬剤選択が必要
🧩 特徴的なてんかんの例
■ 小児特有のてんかん症候群
・ウエスト症候群(点頭てんかん):生後数か月で発症、知的発達障害を伴いやすい
・レノックス・ガストー症候群:難治性てんかんの代表
・良性ローランドてんかん:小学校低学年に多く、思春期に自然軽快することも
■ 成人に多いてんかん
・側頭葉てんかん:記憶や感情に関わる部分から発作が起きやすい
・脳血管障害後てんかん:脳卒中の後遺症として出現
🧠 医療者・家族にとっての配慮ポイント
小児 | 成人 |
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発達と学習支援の両立が必要 | 運転・就労・日常生活での安全管理が必要 |
学校・保育園との連携が重要 | 薬の自己管理が課題になることも |
家族の理解と継続的な支援が不可欠 | 社会的な偏見や制限への配慮が求められる |
✅ まとめ
・小児のてんかんは発達段階での脳の特徴や遺伝的要因が強く関与し、自然軽快も多い
・成人のてんかんは器質的な脳病変や加齢が背景にあり、慢性化・再発性が目立つ
・治療やケアにおいては、年齢に応じたアプローチが必要