外来診療は、限られた時間の中でいかに適切な判断と対応ができるかが問われる非常に高度な現場です。医師が何を診て、何を考えて、どう動いているかを知ることで、患者側もより良い医療の受け手になることができます。
ここでは、
1.外来で医師が実際に診ていること
2.その背後にある判断力と負担
3.医師の視点に立つことの大切さ
をそれぞれの観点から、詳しく、わかりやすく解説します。
① 外来で医師が「診ている」ものとは?
1. 患者の訴えの“真意”
■ 医師は単に「痛い」「眠れない」といった表面的な言葉ではなく、その背景やニュアンスを含めて理解しようとします。
・例:「頭痛」と言われたとき、それが緊張型頭痛なのか、くも膜下出血の前兆なのか、見極める必要がある。
2. 見た目・雰囲気・所作
■ 視診だけで多くの情報を得ます。
・顔色、動作の緩慢さ、姿勢の異常、話し方の変化など。
・「今日の○○さんは、いつもと違う」と気づく直感も重要な判断材料。
3. 症状の訴えと検査データの整合性
■ 限られた検査(血液、画像など)と主観的症状との一致を確認します。
・不一致があれば「隠れた疾患があるのでは」と想像力を働かせる必要があります。
4. 患者の生活背景や価値観
■ 「この人はどういう生活をしているか」「何を優先したいのか」を把握することで、現実的で納得できる治療方針を立てようとします。
② 医師の置かれた現実 〜 ギリギリの判断と責任 〜
外来診療では、1人あたりの診察時間は平均5〜10分程度です。
しかしその短時間で、医師は以下のような責任を背負っています。
■ 見逃してはいけない疾患の選別
・命に関わる疾患(がん、心筋梗塞、脳卒中、敗血症など)を早期に見抜く責任があります。
・しかし、早期の段階では症状がごく曖昧なことも多く、「見逃し」が最大のリスクとなります。
■ 説明と同意(インフォームド・コンセント)
・患者が理解・納得した上で治療を受けることが原則ですが、時間的・心理的に余裕がない状況もあります。
■ 的確な判断のプレッシャー
・「もっと詳しい検査をしたい」「経過をじっくり見たい」と思っても、限られた検査機器・時間・保険制度などの制約がある。
・その中で最良の判断を下す必要があります。
③ 医師の立場に立つと見えてくるもの
■ 患者も“協力者”であることの大切さ
・医師と患者は「対立する立場」ではなく、「同じゴールを目指すチーム」です。
・症状を正確に、率直に伝えること、質問を整理しておくことは、診察の質を高める行動になります。
■ 医師の集中力・判断力を助ける姿勢
・医師が「この人は信頼できる」「話が伝わりやすい」と感じれば、より深いレベルでの診療が可能になります。
■ 感謝や共感が、診療の雰囲気を変える
・忙しい中でも懸命に診てくれる医師に「ありがとうございます」と言うひとことが、信頼関係を深める大きな力になります。
◆まとめ
観点 | 医師がしていること | 患者にできること |
---|---|---|
症状の把握 | 訴えの背景や一貫性を見極める | できるだけ具体的に、率直に伝える |
身体の観察 | 表情・姿勢・しぐさ・反応などを観察 | 体の変化をメモして持参する、質問をまとめる |
時間制限下の判断 | 重篤な疾患を見逃さないよう注意 | 医師に配慮し、要点を絞った会話を心がける |
治療の選択 | 検査・加療・経過観察の判断 | 自分の希望や生活背景を丁寧に伝える |
人間関係 | 忙しい中でも誠実に対応しようとする | 感謝や信頼の言葉を忘れない |
医師の限られた時間と高い責任の中での診療は、私たちが思っている以上に「見落とせないプレッシャーとの闘い」です。
その中で最も効果的な医療が提供されるためには、医師と患者が対話と信頼でつながっていることが欠かせません。
そのようなことを、この場でどうしても理解してもらいたいのです。