――寛解状態と障害年金の関係について――
1. 「寛解」と「治癒」の違い
双極性障害を抱えるクライアントやご家族からは、「今は落ち着いているのですが、もう治ったのでしょうか?」といったご相談をいただくことがあります。
ここで重要なのは「寛解」と「治癒」の違いです。
・治癒:病気が完全に消失し、再発のリスクがほとんどない状態
・寛解:現在は症状が落ち着いているものの、再燃のリスクが依然として存在する状態
双極性障害は慢性疾患であり、一度症状が安定しても再びうつ状態や躁状態が現れる可能性が高いとされています。したがって「寛解」は “治った” こととは同義ではありません。
2. 双極性障害の再燃リスクの高さ
医学研究においても、双極性障害は生涯を通じて再燃を繰り返しやすい病気であることが報告されています。服薬をやめたり、生活リズムが崩れたりすると、再び症状が出現することも少なくありません。
そのため「今は落ち着いている」という状態は、あくまでも再燃リスクを抱えた “安定期” に過ぎないのです。
3. 障害年金と寛解状態の関係
障害年金請求の実務では、「寛解中だから受給はできないのでは?」という誤解があるようです。しかし実際には、寛解状態であっても年金が支給されるケースが多いのが現状です。
その理由は、
・服薬管理が欠かせない
・再発に備えたサポート体制が必要
・就労制限や日常生活に支障をきたしている場合が多い
といった現実があるからです。つまり、診断書に「落ち着いている」とだけ書かれてしまうと、実態が正しく評価されない恐れがあるので注意が必要です。
4. 弊所の専門家としての取り組み ― 診療情報提供書の活用
私は元医療従事者としての経験を活かし、現在は医療コーディネーター、社会保険労務士として障害年金の請求代理・更新の業務に携わっています。
その中で特に重視しているのが、診療情報提供書の活用です。
(通院の中断、転院が多い場合には、前医に診療情報提供依頼をしていただきます)
診断書の作成をご依頼するときに、伝わりにくい “現症” を、具体的に診断書に落とし込んでいただくことにより、審査をされる先生方に障害年金の受給必要性を正しく理解してもらえるメリットがあるからです。
たとえば、
・「症状は落ち着いているが、就労をすると再燃リスクが高い」
・「服薬を怠るとすぐに再燃するため、家族による服薬管理が必須」
といった情報を診断書に記載いただくことで、寛解中でも日常生活に支障をきたしていることを明確にすることが可能になります。
5. まとめ
双極性障害は「今は落ち着いている」からといって、すぐに “治った” と判断できる病気ではありません。再燃リスクが高いため、適切な治療・生活支援と、診断書を作成していただく主治医へ現症の正確な情報提供が重要となります。
障害年金の裁定請求はもちろんのこと、更新時でも同様です。
筆者紹介
吉澤健一(社会保険労務士・医療コーディネーター/ 産業カウンセラー / 臨床工学技士)
神奈川県小田原市の「吉澤社労士事務所 メディカルサポート」代表。
臨床工学技士として医療現場で経験を積み、平成26年度に社会保険労務士試験合格後は、医療機関にて障害年金の申請支援業務を5年経験。その後、障害年金の請求代理に特化した社会保険労務士として、令和3年1月に開業。医療と福祉の両面から支援できる専門性を活かし、特に精神疾患・肢体障害、内部障害における障害年金の請求・更新サポートに注力している。
「医療に精通した社労士」として、クライアント・ご家族・主治医の三者をつなぐ役割を担い、より確実な障害年金受給につながる支援を行っている。