私が開業した当初、「初診日の証明ができないと日本年金機構の窓口に相談したら、『受診状況等証明書を添付できない申立書』を提出してくださいと言われたんですが、この申立書を記入して出せば問題ないんでしょうか?」とお電話をいただいたことがありました。
結論から申し上げますと、添付資料がないまま『受診状況等証明書が添付できない申立書』を提出してしまうと不支給という結果になってしまいます。
受診状況等証明書が取得できない場合、どのように申請するかで審査結果が大きく変わってきます。
今回は、この『受診状況等証明書が添付できない申立書』についてご説明いたします。
当事務所へ不支給となってご相談に来られた方の中で、「初診日の証明が出来ないと窓口に相談したら、『受診状況等証明書を添付できない申立書』を提出して下さい、と言われて出したのに不支給の知らせが来ました」と言われる方が多くいらっしゃいます。
あまり聞き慣れない、この「受診状況等証明書が添付できない申立書」とは一体どのような書類なのでしょうか?
今回はこの「受診状況等証明書が添付できない申立書」に関して詳しくご説明したいと思います。
このページから「受診状況等証明書」と「受診状況等証明書が添付出来ない申立書」のダウンロードも出来ますので、是非ご活用下さい。
受診状況等証明書がなければ認定されない?
受診状況等証明書とは
障害年金では初診日を証明し確定させることが重要になります。初診日とは、必ず客観的な資料を収集して証明するものとされています。その為に必要となるのが、「受診状況等証明書」とよばれる書類です。
この「受診状況等証明書」は医療機関に書いてもらう書類なので客観的な証明書となるのです。
「受診状況等証明書」を添付できないケースとは?
この「受診状況等証明書」ですが、いろいろな状況により「受診状況等証明書が添付できない」場合があります。
医療機関でのカルテの法定保存期間は5年とされていますが、障害年金を申請する場合、初診日が申請から5年以上前というケースも珍しくありません。そのような場合、カルテが既に破棄されていて受診状況等証明書を取得出来ないというケースもあります。
それ以外にも、以下のような場合に受診状況等証明書が提出できないことがあります。
・医療機関が廃院していて受診状況等証明書が取得できない
・カルテ(診療録)に受診科が記載されておらず、どの傷病で受診したかわからない
・受診状況等証明書で「当時の診療録より記載したものです」以外に該当している
「受診状況等証明書が添付できない申立書」とは?
それでは、「受診状況等証明書」がなければ障害年金は認定されないのでしょうか?
実は必ずしもそういうわけではありません。
重要なのは初診日を客観的に証明することにあり、その他の添付資料で初診日が確認できれば認定される可能性があるのです。
本来必要となる「受診状況等証明書」がなんらかの理由により取得できない場合、初診日が証明できないことになります。
しかし、「本人の記憶」を元に書類を作成して、初診日を申し立てることも可能なのです。その本人の記憶を元に作成する書類が「受診状況等証明書が添付できない申立書」と呼ばれる書類です。
こちらの書類は医療機関が記入するのではなく、ご本人で下記のような内容を記入することになります。
・初診日の病院はどこなのか?
・通院期間がいつからいつまでなのか?
・なぜ、受診状況等証明書が添付できないのか?
これらの内容を、自身の記憶を頼りに記載していくことになります。
「受診状況等証明書が添付できない申立書だけ」では不十分
障害年金では初診日を客観的に確定させることが必要であるとされていますが、本人の記憶に基づく「受診状況等証明書を添付できない申立書」では、やはり「客観性」に欠けます。
また、認定基準においては、「原則として、本人の申立等及び記憶に基づく受診証明のみでは判断せず、必ず、その裏付けの資料を収集する」とされています。(障害認定基準 第2 3認定方法)
つまり、「受診状況等証明書が添付できない申立書」は、その名の通り「受診状況等証明書を取得出来ないので添付出来ません」と伝えているだけなので、これだけ単体で提出しても意味がほとんど無く、認定してもらえないことになります。
裏付け資料を収集する
「受診状況等証明書が添付できない申立書」単体では、認定してもらえないとありますが、それでは、どうしたら良いのでしょうか?
最初にお話ししたように重要なのは「初診日を客観的に証明すること」です。
「受診状況等証明書を添付できない申立書」に加えて、客観的で信用性のある「その他の参考資料」を一緒に提出することにより、申し立てた初診日の信頼性がより高めていくことで認定されることになります。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」
+
「参考資料」
参考資料として添付する資料
初診日は原則として、受診状況等証明書で証明する必要がありますが、受診状況等証明書を添付できない申立書と一緒に下記のように客観的で信頼性のある添付資料によって、認められることがあります。
(1)身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳
手帳では、交付年月日、障害等級、等級変更の履歴、傷病名(身体障害者手帳のみ)等が確認できます。更新前の手帳も参考になります。
(2)身体障害者手帳等の申請時の診断書
(3)生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
診断書(写)では、傷病の発生年月日、傷病の原因、傷病の経過等を確認することができます。本人が保管されていない場合は、診断書を提出した市区町村の窓口、福祉事務所、保険会社等に提出した当時の診断書が保管されているか確認してもらってください。
(4)交通事故証明書
交通事故が原因である場合、交通事故証明書で事故発生年月日が確認できるので初診日を特定する資料となります。ただし、警察への届出のない事故については、交通事故証明を交付してもらえません。
(5)労災の事故証明書
事故発生年月日、療養開始日等が確認できるので初診日を特定する資料となります。ただし、労災の給付を申請していない事故については、労災の事故証明書はありません。
(6)事業所の健康診断の記録
事業所は、労働安全衛生法の規定により、健康診断の結果を5年間保管する義務がありますので、本人が健康診断の結果を保管していない揚合は、事業所に保管されているか確認してください。
(7)インフォームド・コンセントによる医療情報サマリー
傷病の発生からの治療の経過や症状の経過等が確認できますので、初診日を特定する資料となります。
(8)健康保険の給付記録(健康保険組合や健康保険協会等)
初診日に係る健康保険の給付記録が健康保険組合や健康保険協会に保管されている揚合がありますので、初診日の証明が取得できない場合は、本人経由で取り寄せてもらってください。
※健康保険組合への開示請求は各組合へお問い合わせください。
(9)次の受診医療機関への紹介状
2番目以降の医療機関にて、前医について確認可能な場合もあります。受診状況等証明書を整備する際には、わかる範囲で前医の医療機関名、受診期間、診療内容を具体的に記入してもらうようにしてください。前医からの紹介で受診した場合は、その紹介状の写しを添付してもらえないか確認してください。
(10) 電子カルテ等の記録(氏名、日付、傷病名、診療科等が確認されたもの)
患者の受診記録を電子カルテ等に保存している医療機関がありますので、初診日、診療科、傷病名が確認できる画面がありましたら、その画面を印刷したものを添付してください。
(11)お薬手帳、糖尿病手帳、領収書、診察券(可能な限り診察日や診療科が分かるもの)
お薬手帳では、処方箋を発行した医療機関等が確認できます。糖尿病手帳では、手帳を発行した医療機関と血糖値などの検査数値が確認できます。領収書では、受診日、診療科等が確認でます。診察券では、発行日(受診日)診療科等が確認できます。
(12)第三者証明(20歳前に初診日がある場合)
複数の第三者(民生委員、病院長、施設長、事業主、隣人等であって、請求者、生計維持認定対象者および生計同一認定対象者の民法上の三親等内の親族は含まない。)証明により確実視される場合は、その証明により確認して差し支えないとしています。
※20歳前に初診日がある場合であっても初診日時点において厚生年金に加入していた場合は以下(13)の取り扱いとなります。
(13) 第三者証明(20歳以降に初診日がある場合)
複数の第三者(民生委員、病院長、施設長、事業主、隣人等であって、請求者、生計維持認定対象者および生計同一認定対象者の民法上の三親等内の親族は含まない。)証明および初診日について参考となる上記(1)~(11)のような他の資料。