2023.04.01

コラム

受診状況等証明書が添付できない申立書とは

私が開業した当初、「初診日の証明ができないと日本年金機構の窓口に相談したら、『受診状況等証明書を添付できない申立書』を提出してくださいと言われたんですが、この申立書を記入して出せば問題ないんでしょうか?」とお電話をいただいたことがありました。

結論から申し上げますと、添付資料がないまま『受診状況等証明書が添付できない申立書』を提出してしまうと不支給という結果になってしまいます。
受診状況等証明書が取得できない場合、受診状況などが確認できるどの参考資料を添付できるかで審査結果が大きく変わってきます。

今回は、この『受診状況等証明書が添付できない申立書』についてご説明いたします。
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/shougai/shindansho/20140421-20.files/0000012240LLUrWQRKWy.pdf

『受診状況等証明書が添付できない申立書』とは、A4サイズ1枚の用紙です。
裏面に「記入する際のお願い」がありますので、よくお読みになりご記入ください。

■ 受診状況等証明書 を添付できないケース

医療機関での診療録の保存期間については、保険診療のルールを定めた「保険医療機関及び保険医療養担当規則(いわゆる療担規則)」によると、診療録は完結の日から「5年」それ以外の帳簿・書類(例えばX線フィルムや領収書など)は「3年」と定められています。

※ 第9条 保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあっては、その完結の日から五年間とする。(出典:保険医療機関及び保険医療養担当規則)

ちなみに、この完結とは、その患者の診療が完結した時と考えることになり、継続的に受診されている患者の診療録は5年が経過しても捨てるのは難しく、継続した保管が必要と考えられます。
また、日本医師会の「医師の職業倫理指針(第3版)」では、電子カルテなどへの移行が進む中で、診療録の保存期間は永久保存とするべきとしています。

※ 記録保存形式の主流が紙媒体から電子媒体に移行しつつある状況において、診療諸記録の保存期間は診療録の保存期間と同じになるべきである。わが国では法律上5年という期間が定められているが、電子媒体化に伴い永久保存とするべきである。(出典:医師の職業倫理指針【第3版】)

障害年金を申請する場合、初診日が5年以上前というケースもあり、診療録が既に破棄されていて受診状況等証明書を取得できないこともあります。

■ 初診時の医療機関で受診状況等申立書を取得できない場合の対応策

初診時(第1診)の医療機関で診療録が残っておらず、受診状況等証明書を記載していただけない場合は、
● 2つ目に受診した医療機関(第2診)に問い合わせる
● 2つ目の病院(第2診)でも診療録が残っていない場合は、3つ目に受診した医療機関(第3診)に問い合わせる
という流れで、一般的には診療録が残っている一番古い医療機関で記載してもらうことになります。

■ 受診状況等証明書が添付できない申立書 とは

「受診状況等証明書がなければ障害年金は認定されない」というわけではありません。
ここで重要なのは、「初診日を客観的に証明すること」にあり、その他の添付資料で初診日が確認できれば問題ありません。

「本人の記憶」を基に書類を作成して初診日を申し立てることも可能であり、その本人の記憶を基に作成する書類が「受診状況等証明書が添付できない申立書」です。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」は医療機関が作成する書類ではなく、請求者が作成する書類になります。

■ 受診状況等証明書が添付できない申立書 にある項目

① 傷病名
② 医療機関名
③ 医療機関の所在地
④ 受診期間: 昭和・平成・令和  年  月  日 ~ 昭和・平成・令和  年  月  日
⑤ 上記医療機関の受診状況等証明書が添付できない理由をどのように確認しましたか。
次の<添付できない理由>と<確認方法>の該当する▢にレをつけ、<確認年月日>に確認した日付を記入してください。
その他の▢にレをつけた場合は、具体的な添付できない理由や確認方法も記入してください。
<添付できない理由> <確認年月日> 平成・令和  年  月  日
▢ カルテ等の診療録が残っていないため
▢ 廃業しているため
▢ その他
<確認方法> ▢ 電話 ▢ 訪問 ▢ その他(      )

⑥ 上記医療機関の受診状況などが確認できる参考資料をお持ちですか。
お持ちでない場合は、次の該当するものすべての▢にレをつけて、そのコピーも添付してください。
お持ちでない場合は、「添付できる参考資料は何もない」の▢にレをつけてください。
▢ 身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
▢ 身体障害者手帳等の申請時の診断書
▢ 生命保険・損害保険・労災保険の給付時の診断書
▢ 事業所等の健康診断の記録
▢ 母子健康手帳
▢ 健康保険の給付記録(レセプトも含む)
▢ お薬手帳・糖尿病手帳・領収書・診察券(可能な限り診察日や診療科が分かるもの)
▢ 小学校・中学校等の健康診断の記録や成績通知表
▢ 盲学校・ろう学校の在学証明・卒業証明
▢ 第三者証明
▢ その他(    )
▢ 添付できる参考資料は何もない

上記のとおり相違ないことを申し立てます。
令和  年  月  日
請求者 住所・氏名
代筆者氏名 請求者との続柄

■ 受診状況等証明書が添付できない申立書 を使用する場合の注意事項

「この書類だけでは、何の役にも立たない」ということをご理解ください。
このような書式があると、「受診状況等証明書がなくても本人が申し立てた日を初診日として認定してくれる」と思われがちですが、そのようなことは全くないということです。

「原則として、本人の申立等及び記憶に基く受診証明のみでは判断せず、必ず、その裏付けの資料を収集する」ということが、「障害認定基準」に明記されています。

従って、「確たる参考資料をつけて初めて意味を持つ 」申立書だということです。

添付する資料は、健康診断の結果表、処方箋、病院の受付記録など医療に関する資料や、日記家計簿などでも過去に認定されたケースがあります。その方の状況によって揃えられる資料は異なりますし、傷病によっても必要な証拠も異なります。「この参考資料を添付すれば必ず認定される」というものではないため、臨機応変に行うしかないのが現状です。

また、「一度障害年金の請求してしまうと、その資料は永久に日本年金機構に保管される」ことも忘れないでいただきたいことの1つになります。

受診状況等証明書の取得ができない障害年金の申請は、ご自身で行うにはハードルが高い請求であると言えることから、まずは弊所にご相談されることをお勧めします。




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