健康診断の結果や外来受診での血液検査。
「異常値がありますね」「生活改善しましょう」と主治医から説明を受けても、どこか現実味がなく、自分の問題として受け止めきれない —— そのような経験をされる方は多いはずです。
数値として示されているはずなのに、行動に結びつかない。
これは決して珍しいことではなく、患者として自然な心理反応でもあります。
今回は、「なぜ自分事として捉えにくいのか」、そして「どの数値をどう見れば理解しやすくなるのか」を解説します。
1.なぜ「自分事」として受け止めにくいのか
■ 症状がないため危機感が生まれにくい
多くの生活習慣関連の異常値(血糖、脂質、血圧など)は、初期段階では自覚症状がありません。
人は体感できないリスクに対して行動を起こしにくく、緊急性を低く見積もる傾向があります。
■ 正常/異常の意味が理解できていない
検査結果表の「H」「L」表示だけでは、
・何が起きているのか
・放置した場合どうなるのか
・いつまでに対応すべきなのか
が具体的にわかりませんし、
理解できない情報は、行動に移しにくいものです。
■ 心理的防衛(セルフ・サービング・バイアス)
人は不安を避けるために、
・「まだ大丈夫」
・「今回だけだろう」
・「年齢のせい」
と解釈して安心しようとします。
これは無意識の自己防衛であり、特別なことではありません。
■ 生活習慣の改善のハードルが高い
主治医からの指示が抽象的な場合、
・食事の改善
・運動
・禁煙
・減量
といった行動は生活習慣の見直しを伴うため、心理的負担が大きく、先送りされやすくなります。
2.自分事として理解するための視点
数値を単なる結果ではなく、「未来予測」として捉えることが重要です。
確認すべきポイントは次の3点です。
① 基準値からの逸脱幅
どれだけ基準値から外れているかを見る
・わずかな逸脱
・明確な異常域
・治療介入レベル
これらを見ることにより、対応の優先度が異なります。
② 経年の変化(前年・前回との比較)
1回の結果よりも重要なのが、「数値の推移」です。
・徐々に悪化している
・急激に変化している
この変化は身体の状態変化を反映します。
③ 将来疾患との関連性
その数値が、「何に直結するか」を理解する
例:
・血糖 → 糖尿病
・LDLコレステロール → 動脈硬化
・血圧 → 脳・心血管疾患
「数値=疾患リスクの入口」と認識できると、現実味が高まります。
3.特に “ 自分事 ” として注視したい代表的指標
一般的な健診項目の中で、生活習慣と強く関連する代表例です。
(※あくまで、理解促進のための整理です)
① 血糖関連
・空腹時血糖
・HbA1c
糖代謝異常の早期把握指標
自覚症状が出にくいため、軽視されやすい領域
② 脂質関連
・LDLコレステロール
・中性脂肪
動脈硬化進行の背景因子
将来的な循環器疾患に関与
③ 血圧
・収縮期/拡張期血圧
慢性臓器負担の指標
継続的管理が重要
④ 肝機能
・AST
・ALT
・γ-GTP
生活習慣影響を受けやすい代表的項目
自覚症状が出にくい
4.忠告を行動につなげるための具体策
(1)数値を具体的に質問する
外来受診時に確認することの例:
・どの程度危険なのか
・放置した場合はどうなるのか
・具体的な改善目標値
理解の具体化が行動につながります。
(2)生活改善を抽象語で終わらせないこと
例:
✖ 食事に気を付ける
→
・夕食は、炭水化物量を減らす
・週○回、歩行○分
「実際の行動」にまで落とし込むことが重要です。
(3)数値を定期的に確認すること
改善の可視化はモチベーション維持に直結します。
・再検査
・自己の記録帳
結果の追跡が、行動継続を支えます。
5.まとめ
検査数値は単なる記録ではなく、
身体の現在位置を示す客観的指標です。
自分事として理解するためには
・数値の意味
・将来の疾患への関連
・経年変化
を結びつけて捉えることが重要になります。
症状がない段階での気付きと対応こそが、
将来の疾患発症や重症化を防ぐ第一歩となります。
血液検査の結果を受け取ったときには、
「異常かどうか」だけでなく、
「この数値が自分の将来の何を示しているのか」
という視点で読み取ることが大切です。
