2026.02.20

コラム

脊髄損傷の障害年金請求における注意点について

―― 介護と並行して進めるために、まず理解していただきたいこと ――

脊髄損傷は、受傷直後から生活が一変する重大な外傷です。
ご本人はもちろん、ご家族も24時間体制の介護や環境調整に追われる中で、「障害年金の手続き」まで考えなければなりません。

これまでの経験則から、医療機関に在籍するメディカルソーシャルワーカー(MSW)に相談しながら請求を検討される方が多いのが現状のようです。

そのような状況だからこそ、最初に制度の骨格を理解しておくことが重要になります。


1.障害年金は「病名」ではなく「機能障害」で評価される

脊髄損傷は、損傷高位によって残存機能が大きく異なります。

● 頸髄損傷
● 胸髄損傷
● 腰髄損傷

障害年金では、「脊髄損傷」という診断ではなく、

・四肢麻痺・対麻痺の程度
・感覚障害の範囲
・膀胱直腸障害の有無
・日常生活動作(ADL)の制限

といった 具体的な機能障害の内容 が評価対象になります。

まず理解していただきたいのは、
「重い病気 = 高い等級認定」ではないという点です。
あくまで日常生活上の制限の程度が基準となるということです。


2.障害認定日とは何か ― 制度上の時間軸を理解する

障害年金には「障害認定日」という概念があります。

原則は、
初診日から1年6か月を経過した日 が障害認定日です。

この時点の状態で、障害等級に該当しているかどうかが判断されます。

しかし、脊髄損傷ではここで重要な視点があります。


― 障害認定日の特例について ―

脊髄損傷は、医学的に回復の限界が明確になりやすい外傷です。

そのため、一定の重度障害状態に該当する場合は、
1年6か月を待たずに「症状固定」とみなされ、認定日請求が可能となる特例があります。

例えば、

・四肢麻痺が明らかで改善の見込みが乏しい場合
・人工呼吸器管理となった場合
・重度の膀胱直腸障害が永続的と判断される場合

などは、早期に障害状態が固定したと判断されることがあります。

つまり、

「1年6か月経たないと請求できない」という理解は、必ずしも正確ではありません。

受傷直後から明らかに重度である場合は、
特例に該当するかどうかを検討する価値があるのです。

ここを知らないと、本来受け取れるはずの障害年金が後ろ倒しになる可能性があります。


3.診断書の作成依頼時に最も重要な視点

診断書は単なる医学的記録ではありません。
障害年金制度における「評価資料」です。

診断書の作成依頼時には、次の整理が重要です。


日常生活動作(ADL)の具体化

・自力での体位変換は可能か
・移乗は一部介助か全介助か
・排尿管理は自己導尿か、留置カテーテルか
・排便管理に介助は必要か
・入浴、更衣、食事はどの程度可能か

「できる/できない」ではなく、
どの程度の介助が必要かを具体的に記載してもらうことが重要です。


神経学的所見の整理

・麻痺の範囲
・感覚レベル
・痙性の有無
・筋腱反射異常
・膀胱直腸障害の詳細

特に膀胱直腸障害は、等級判断に直結します。


合併症の記載漏れ防止

脊髄損傷では、

・褥瘡
・起立性低血圧
・呼吸機能低下(特に頸髄損傷)
・神経障害性疼痛

などが日常生活の制限に大きく影響します。

これらが診断書に反映されなければ、実態より軽く等級認定される可能性があります。


4.日常生活実態と診断書の整合性

障害年金では、診断書と「病歴・就労状況等申立書」の整合性が極めて重要です。

例えば、

・病歴・就労状況等申立書では「常時介助」
・診断書では「一部介助」

という不一致があると、審査に影響が生じます。

これは、
日常生活状況の情報共有ができていないことにより、生じることが多い問題です。

診断書の作成を依頼する前に、日常生活状況を整理して、主治医と情報共有することが大切になります。


5.まとめ

―― 脊髄損傷で障害年金を請求する際に、押さえるべき4つの視点 ――

(1)病名ではなく「機能障害」で評価されること
(2)障害認定日は原則1年6か月だが、特例があること
(3)診断書は治療記録ではなく「評価資料」であること
(4)日常生活実態と診断書の整合性が審査の鍵になること

介護と障害年金の請求手続きを並行して行うことは、精神的にも肉体的にも大きな負担になります。

しかし、
制度の時間軸(認定日)と特例の存在を理解しておくだけでも、
請求時期や準備の仕方が大きく変わってきます。

「知らなかった」で不利益を受けないためにも、
正確な制度理解が、最初の一歩になるのです。

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